「風に吹かれて」を日本語訳した野上彰の正体とは?アカシア忌で偲ぶ知られざる文学的功績
野上彰の文学的功績を語る上で欠かせないのが、彼が世を去る直前の1966年に発表した異色の長編詩『阿波祈祷文』です。東京新聞が報じたように、この作品は全編が徳島の方言(阿波弁)で綴られています。「地球が呻(うめ)いてんのが聞こえんので」と泥臭く、しかし切迫した語り口で問いかけるその言葉は、標準語の枠組みでは掬い取れない生々しい民衆の怒りと哀哀を宿しています。
ベトナム戦争が激化の一途をたどっていた時代、野上は自らが経験した太平洋戦争の記憶と重ね合わせるように、故郷の言葉で反戦の叫びを刻み込みました。この詩篇は近年、三味線音楽の「地唄」の演目として作曲・上演され、伝統芸能の舞台を通じて若い世代にも鮮烈な印象を与えました。西洋のフォークソングを日本語に移入した詩人が、同時に土着の言葉を究極の平和祈願へと高めていたという事実は、野上の文学が持つ両極のダイナミズムを物語っています。
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